豊かさの秘訣は分業

TEDで見た話。

スピーカーがスライドで、50万年前の人類が使っていた、石を削って作った手斧と、最近ではありふれたPCマウス(USB接続の光学インターフェース機器、プッ)を示していう。

「手斧は、使う人が自分で作った。作り方も全部知っている。一方マウスは、使う人は、どう作るのか、いかに作られたのか、誰が作ったのかは一切知らない」

たしかにそうだ。もし一からマウスを作ろうと思ったら、材料のチップ(レアメタル)や、プラスチックの原料となる鉱物資源まで全部自分で掘り出して調達し、加工し、金型も作ってと気が遠くなるプロセスを経なければならない。

でも、いまでは数百円で、近所の家電量販店でマウスを買ってきて使えばよい。誰かが掘り出した鉱物資源を、誰かが精製して、誰かが運んで、誰かがマウスのデザインをし、誰かが基盤回路を設計し、誰かが金型を作って、誰かがチップを作って、誰かが組み立てて、誰かがパッケージングして、誰かがまた運んで、誰かが検品して棚に並べ、誰かが店に並べて、誰かがレジで私に売ってくれる。何千、何万の人がこのマウスを分業で作って販売している。

家電量販店は車で10分。鉱物資源の採掘から全部私が自分でやるのに比べると、分業のおかげでだいぶ時間が余るようだ。余った時間をどうしようか。自由に使える! この自由こそ、豊かさなんだスピーカーはいう。

は~人類は進化して、文明が進展して、こういうふうに複雑で幾多のプロセスを経なければできないものも、破格の安さでそこら辺で手に入るんだ。あっという間に。

じゃあ、そのおかげで余った豊かさ、時間の余剰を、今度は何に使えばいいんだろうか?

マジ、なんだろう。それって。

嫌な予感がしてきた。その余剰時間で、手斧を削ったりするのに比べて比較にならないほどストレスを感じながら、頭をフル回転させて、なにか生産的なことをしないといけない感じがするのは私だけだろうか? 分業に不可欠な協力や人との交流からたちまち脱落するであろう、私や私の次女みたいなアスペルガー気味の人は、マウスではなく削る手斧を見つけられるのだろうか?

手斧を一つ一つ削るような営みって、マウスが10分で数百円で手に入るこの時代にあっても、絶対になくしちゃいけない。それは、もしかすると哲学が引き受ける領域なのではなかろうか? またはDIYとか。

分業についてポジティブに評価しようと書き始めた投稿だったが、はからずも、太古の祖先との共通点に思いを馳せて癒されるやさしい風合いの記事となった。

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