アメリカ麻薬取締法で作られる現代のゲットー

BS世界のドキュメンタリーでアメリカの麻薬取締法のせいで、一般市民が単に麻薬を使っただけで、過剰に刑罰を押し付けられて刑務所(ゲットー)に閉じ込められている問題を知った。

番組で話していた歴史学者はこうやって人類はある種の人々をつねに社会から識別して排除し、場合によっては構造的に殺戮(ホロコースト)をしてきたという。

現代のアメリカで、恐るべきホロコーストが起こっているなどと聞けば誰もが動揺するはずだ。たしかに、麻薬取締法違反をしたからといって殺戮までされている事実はない。しかし、この法律を犯した人は、ほかの刑罰に比べて合理性を欠くほど、つまり不当に長いあいだ刑務所に収容される。そうなると本人の人生は破綻するし、家族だって困難に立たされてしまう。基本的人権のまっとうということからいうと程遠い状況に押し込められてしまう点で、麻薬取締のホロコーストとの共通点を番組は指摘する。

番組では、依存症専門医が言っていた言葉が印象的である。肺炎の患者が咳をしている。咳を止めさえすればよいかというと問題はもちろん解決しない。炎症を起こした肺の治療がそもそもなければ、咳はなくならない。麻薬依存も同じだというのである。麻薬を使ったからといって捕まえてとじこめておくのは、なんの問題の解決にもならない(ちなみにアメリカの刑務所では麻薬依存の治療は行われないので、刑期を終えて出てきてもすぐ再犯して逆戻りになる)。

いったいどういう人が麻薬を使うんだろうか? 資本主義経済が冷徹に、もう仕事はないと職場、ひいては地域社会から閉め出した、黒人系移民など社会的貧困層の人たちである。麻薬取締法の立法の経緯は、番組で知ったのだがとても不愉快な感じである。なぜなら、まず、富裕な白人たちは経済的な都合で不要になった黒人から仕事を取り上げる。彼らは不安を癒すために麻薬を使う。最初、その麻薬を取り締まる法はなかった。しかし、仕事がなくて麻薬を吸っている黒人は、地域社会では目障りになる。そこで白人らは議員を使って、麻薬を取り締まる法律を作った。

白人富裕層が使う麻薬と、黒人が好んで使う安い麻薬とでは、量刑に百倍も開きがある。このことにより、白人が法を使って黒人(最近では白人)の貧困層を締め出そうとする排斥性が際立つ。

翻って日本の社会で似たようなことは起きていやしないだろうか? このような法制度ほどではないものの、なにか社会の一定の層をまとめて排斥しようとするムーブメントは、じつは枚挙にいとまがない。

たとえば、原発は危ないからやめようというサヨクの皆さんの主張。言っていることはもっとも出し誰でもわかる。しかし反原発の連中は原発労働者や、原発無くしていきていけない地域社会の人たちの現実が見えていない。体にわるいと知っても働かなくてはならない彼らの職場を奪って、地球環境だ子どもたちの健康だといったところでどうなんだろう? それだけじゃダメだろう。

もう一つは、根強い韓国中国差別だろう。日本の歴史教科書を見直したがったり、従軍慰安婦とか南京虐殺はなかったなどとする歴史修正主義を支持する人たちもまた、今の日本の資本主義の枠組みから排除され、貧困に直面しつつあることが知られている(ヘイトスピーチは麻薬的快楽をもたらす?)。

私は資本主義がまずいと思う。もちろん、共産主義や社会主義はもっとまずいが、この資本主義も、金の都合で抱えきれなくなると、さっさと社会の一定層を排除して捨てようとする危険が常にある。

私はそういう資本主義の危険な性格、ホロコーストへのインセンティブが常に萌芽しがちな黒い性格を日本で押し留めていのが、世界に誇るべき、日本国憲法だと思う。

アメリカの麻薬取締法のような変な法律を作って為政者が、気に入らないとか、経済的に都合が悪くなったからと社会から切り捨てようとする社会的弱者を守るのは憲法なのだから、その憲法を、当の立法権者が変えようとするのはぜったいズルいし、許されることではない。憲法を変えるべきだと口に出せる正当な者とは、資本主義の脳にすっかりヤラれた世襲の保守的政治家たちではなく、わたしたち国民である。そして今のところ、国民の間にそうした動きはまったくないのである。

今もっとも注意しなければならないのは、そうした論外な保守的政治家を厳しく糾弾してダメだろうそれはと言わなければならないジャーナリズムが日本でほとんど機能していないことだろう。ジャーナリズムもまた、その規模が大きくなればなるほど、世襲の保守政治家と利害が一致してしまっている。つまり、自分たちの権益維持のためには、弱者など刑務所にぶち込んでしまえばいいと思っている。そして、刑務所の備品を収める企業や、刑務所関連ポストに地位を得て、老後まで安泰に暮らしたいと思っているのかもしれない。

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