トラウマからの解放

EMDRという、眼球を左右に動かしながら、自分の過去のトラウマ体験をセラピストに告白して受けるトラウマ治療法についてETV特集でやっていたので観たのだが、なかなかの驚きに満ちたものだった。

トラウマ(心的ストレス性外傷)がある人の脳は、トラウマ体験が頭の中で甦ると、「サバイバル脳」が活性化して、理性的な判断や合理的志向はできなくなる。サバイバル脳が緊張状態になることで、感情的になったり、理性のたがを失って犯罪行為を犯したり、不眠やイライラ、頭痛といった身体症状にも苦しむようになってしまう。

そうした身体症状がつみかさなり、鬱病を発症、から自殺企図にまで至るケースもめずらしくない。こうした事態になるとたいていの心療内科医は、対症療法的に睡眠薬を出したり抗うつ剤を処方するばかり。肝心のトラウマを除去しないので、一向に治らない。原因を治さず、表に出た症状を刹那的に治すために、莫大な医療費や薬が浪費されることになる。もちろん、トラウマに苦しむ患者本人にとっても救われない。

WHOはEMDRを、心療内科の治療のガイドラインのひとつに加えたそうで、私はこれはよいと思った。なぜって、何年にもわたって、医者似通って薬を飲んでも治らなかった鬱病患者が、ときに医師免許すら持っていないセラピストによって、左右に目を動かしながらトラウマを治療してもらうだけで、嘘みたいに症状が快癒するわけだから。

もちろん、鬱病の全部がトラウマのせいとはいわないのだが…。

ETV特集『トラウマからの解放』で登場するトラウマの被験者の皆さんの、幼少時の体験は、普通に育てられた私からすると聞くだけでもつらい、凄惨を極めたものである。内容は列挙しないが、近親者からの継続的な暴力(性暴力を含む)がほとんどである。

成人してからも、そうした被害を受けた人は、男性の声に異様に恐怖感を抱いたり、原因不明の頭痛に悩まされたりと、リアルに健康な生活は送れなくなるのである。憲法が保障する、健康で最低限度の文化的生活は、トラウマのせいで手に入らない。

気の毒というほかないわけだが、こうした治療法が効果を上げているというのは救いだ。こうした治療法を発明して、実践する治療者の皆さんに心から敬意を表すとともに、この治療が日本で一刻も早く保険が利く治療になり、多くのEMDR実践者が医療機関で増えることを望んでやまない。

ところで、サバイバル脳についてもう少し深く考えてみたい。

人類がまだ、他のどう猛な動物たちからの脅威に常に神経をとがらせて暮らさなければならなかったときは、サバイバル脳こそ、生きていくために必要不可欠なものであった。その後、文明が進展し、今はそんな危険はほとんどなくなった。

ところが、人類の歴史、たしか4万年のうち、サバイバル脳がその本来の機能をさほど求められなくなっから、なにしろ日が浅い。したがって、脳におけるサバイバル脳の容積率(重さ)は、4万年前とあまり変わらないといわれている。

それで、トラウマの話に戻るが、小さい頃に(身近な人に暴行されるといったことで)サバイバル脳がたびたび緊張を強いられたひとは、それが原因で苦しむようになるというのは腑に落ちる。

幸い私は暴行こそ受けなかったが、病的に気が散る。集中しないといけないことがあるとすぐに逃避してしまうし、何かに集中したらしたで今度は貧乏揺すりをしたり、爪を噛んだりと奇怪な行動を取る。これって、サバイバル脳のせいじゃないのか?

書店には、人間をひとつのことに集中させて仕事や勉強の目標を成就させようという自己啓発本がたくさん売っている。しかし、そもそもそんな本を読んだところで、実際集中できるようになるはずがないのである。4万年以上も変わらない人間の脳みその一部、サバイバル脳を何とかしないといけない。

EMDRも、テニスやランニングといったスポーツも、脳の血流を変えて、サバイバル脳をクールダウンするためだろう。あーもう風呂でも入るか。

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