2017年から普通徴収はどうなるのか?

 事業主および副業で従たる事業所の所得(税額)を主たる事業所に通知されると都合が悪い方は以下の長文にぜひとも目を通していただきたい。
 2017年から次の東京都のHPでも書いてあるとおり、東京都と62市区町村は個人住民税をなんとしてでも特別徴収でやってもらいたいと叫んでいる。
「特別徴収推進ステーション」 http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/tokubetsu/
 法律に普通徴収じゃなくて特別徴収しなきゃならんと書いてあるんだから当たり前である。だから、税理士もこれに呼応する。
 この背景には、市区町村は激増する普通徴収者の滞納で徴税事務が破綻しつつあることが推測される。
 結局子供産ませて国府を増大させるなどの、国の全体像をきちんと政策でこれまで考えてこなかったしわ寄せがこういうところにも出てきている。資本主義の再分配の失敗もあるだろう。ざまみろという感じだが私も事業主であり他人事ではないので、この問題について書くことにする。
 はじめに、税理士などが書き散らす営業目的のブログでは、「2017年からは副業は絶対にできなくなる」みたいな論調が散見されるようになってきたが字義通り受け取る必要はない。副業ができないわけがないし、絶対にそれが主たる事業所にばれるというのも限らない。そんな杓子定規な運用が徴税の場面でなされてたらどんなにいいか(役人の立場からいえば)。実際はもうめちゃめちゃなんだろう、きっと(ご愁傷様)。
 法律より偉い憲法では、労働権もあれば、自治体の徴税権もある。どういうふうに働き、納税(徴税)するかは、最終的に当事者間で決めるべき筋合いで、そのやり方について、東京都がああだこうだいったところで意味がない(★ただし法律に従うといわれたらお終いだ、投票に出かけて議員を選び直して、法律を変えるほかない)。自治体がなんといおうと、自治体は東京都のこんな運動に盲従する必要はないだろう(ただし、法律通りだし盲従したほうが徴税はスムーズにいくので当然渡りに船のように運用に採り入れるだろう、ただ副業できなくなって首になったりした住民が生活保護とかいってくるかもしれないがな)。
 その法律上、事業主は原則として前年の給与支払があり当年4月1日に勤めている月給の従業員については普通徴収ではなく特別徴収の方法で源泉徴収するべし!と書いてある。
 こうした法律の運用として、法律に違背はあるものの、2017以前は個別の運用では普通徴収も認めているのが実情だ。
 理由として、個別に、住民である納税者が市役所区役所にやってきて、どうしても主たる事業所に対し、普通徴収の(従たる事業所の、乙欄の)税額なり所得が通知されるのは都合が悪い、だから自分で確定申告して住民税を「払いたい」から、特別徴収に合算するのだけは勘弁してほしいというお願いがあれば、法律違反だからそれは一律ダメだと言うことはこれまでもないし、これからもない。納税者が納税するっていっているんだから、それを断るのはおかしいだろう。これまでは。
 しかしこれからは、自治体は都と一丸となって、こうした法律に違背する運用を排斥する方向に行くのは間違いない。これ以上、住民税の滞納に代表される徴税事務の煩雑を放置していたら、職員の寝る暇が無くなってしまうのでは無かろうか?
 というわけで、いま、副業をしていて、主たる事業所に所得がばれるのがまずいからと普通徴収している給与所得者は、自治体に問い合わせて、運用を厳格に適用し、一律特別徴収にするのか、それともこれまで通り普通徴収で何とか目をつぶってくれるのか?確認したほうが良かろう。その際に、都は普通徴収をしたからといって自治体に不利益なことをしたりすることはないが、担当者が一堂に会する会議で、自治体の担当者が都の職員に皮肉のひとつもいわれるかもしれない。それに、自治体職員だって、徴収税務を事業者に肩代わりさせたほうが楽だから、なかなか難しいだろう、副業(プライバシー)を理由に普通徴収にするのは。とにかく生活が厳しくて、収めたくても収められないところまできている、だからやむを得ず副業をして住民税を払っているとかいえばよいかも。
 なおこれは今日現在、私の住んでいる市と、東京都の主税局や広報のセクションに直接電話して聞いた話である。市の担当者、都の広報の担当者、都の主税局の担当者それぞれ、微妙な温度差があった。それに、今後、副業収入が主たる事業所の特別徴収に合算されるプロセスにおいて、プライバシーを保護する目的で、何らかの施策が登場する含みを私は感じ取った。
 たとえば市の担当者はこういっていた。収入の部分は隠して、税額だけ連絡することにするとか。しかし税額が分かったら、敏感な経理担当者は不審に思うに違いない。こいつだけ何で、税額が他の社員より多いのかとか。ばれたら社内規則違反で、会社に対して気まずくなってしまい、結局転職を余儀なくされるリスクは残るだろう。私がこのことを指摘し、そんな対策はまったく意味がないと言ったのだが(言ったところでもちろん意味はない)。
 また、2016年の年末調整から新たに「普通徴収切り替え理由書」というのが登場する。これは一定の基準を満たした従業員が「普通徴収」を選択することを、事業主が自治体に報告する趣旨の用紙である。この理由書に、普Bという選択肢があり、そこにチェックを入れて、これまでの給与支払い報告書といっしょに事業主は自治体に給与支払を報告する。ただ、その書類を出しさえすれば、そのことをもって自治体が主たる事業所に従たる事業所からの所得の税額を通知しないという意味ではないことには注意が必要だ。この書類は単に、徴税事務の円滑運用のために、事業主に新規に課せられる書類に過ぎない(超トホホ)。
 繰り返しになるが、徴税するのは住んでいる自治体(市区町村)。納税するのは、従業員個人である。都が何を言おうと、法律になんと書いてあろうと、自分の主張すべき権利はしっかりと主張し、法の乱暴な運用(しかも徴税義務を事業主に丸投げしようという魂胆もある)をさせないよう、市民ひとりひとりが取り組んでいくべきだと思う。
 都の主税局の職員は私にこういった。「源泉徴収票に「普通徴収希望」と書いても意味がありません、必ず特別徴収になる」。
 私は企業の代表者で、しかも経理事務も全部自分でやっている。給与ソフトがほとんど自動で年末調整をやってくれるが、源泉徴収票(給与支払い報告書)摘要欄に「普通徴収希望」と書くのだけはマニュアルにも書いていないしソフトも助けてくれない。自分で入力しなければ、印刷されない。しかしこここそが重要であった。源泉徴収票(給与支払い報告書)に「普通徴収希望」と書けば、事業主は徴税事務から解放されるし、従業員も、主たる事業所にばれないで済む余地が担保されていた。ところが、主税局職員はそこを鋭く突いた。「意味が無くなる」と。
 ここ二十年くらい、日本の給与所得者の所得は下がり続けている。政府の政策における再分配機能は、高齢者優遇でなおかつ金を稼げる人が不利益にならないようになっているし、労働分配率は株主に損失を与えないよう、注意深く毎年下げられている。若い給与所得者の多くは、副業でもしないと家計が維持できない事態になってきている。にもかかわらず、その副業の道がこうして閉ざされようとしている。
 私たち市民は、役人が「法律通りに運用する」というのに対し、抗弁する手段は裁判しかない。もちろん裁判を起こすなど非現実的だ。だから、法律を作る前の段階、議員を選ぶ段階で、しっかり投票すべき代議士を選ぶべきであった。安保法案だってそうだ。投票の際に気をつけないと、こういうふうに、法律でどんどん不利益な状況に追い込まれていく。
 戦争とか、憲法とか、消費税とか、そういう分かりやすいイシューで沸騰するメディアと世論に対して私は残念な気持ちでいっぱいだ。そんなことで沸騰している場合ではない。2017年からはじまろうとしている特別徴収推進のムーブメントにこそ、沸騰しなければならないと思う。
 残念ながら、自治体が普通徴収ではなく特別徴収を原則適用徹底するという本件、人口に膾炙する話題ではない。これは。ほとんどの給与所得者にとり、まったく身近でもなければ、興味を持ち続けるのは至難の業だろう。何か面白いスローガン、少なくとも、短く言い表す方法はないか。ない。特別徴収、普通徴収。特別が、原則で、普通が、例外。ここからして通りにくい。笑ってしまうほどだ。最初は、みんな住民税をおとなしく払っていたんだろう。しかし、事業所も、納税者も、住民税を滞納しはじめたに違いない。雪崩を打って。金がないから。だから、法律通りわーっとやって、取れるとっから取っちまえーという競争が始まった。事業主もそれに荷担させられる。事業主は、立場的には弱い。やはり個人個人の納税者が自治体にあれこれうったえるべきだろう。私はそのための情報を提供するまでだ。
 とはいえ、本稿を書くにあたって取材した先の自治体の担当者に、私は私見と断ってこう述べた。
「そうやってむりくり事業主に徴税義務を課したりすれば、結局は副業ができなくなった生活者は生活保護にいくこととなり、最終的なコストは増えることになる、そういうことを想像できないか? それに、いまは資本金の縛りもなければ、税理士に頼むこともなく、簡単に法人を持てる時代だ。猫も杓子も法人を立ち上げる時代に、一方的に事業主に徴税事務を転嫁するようなことが現実的に成り立つと思ってるんだったらそれはあまりに楽観的。事業主よりも強制力のある自治体なり政府が今後も「普通に」徴収するのが筋なのでは?」
 もちろん返事はなかった。
 結局事業主(である私)も、自治体も、徴税事務は感情的には「いやーやだやだー」なのである。しかし自治体は法律という武器があるから、私は黙るしかない。電話で何を言おうが、負け犬の遠吠えにしかならない。
 最後に2つ。まず、判例では事業主は徴税事務を転嫁されても文句が言えない。要はそれくらいはやれるだろうと裁判所も言っている。だから、法律を変えるしか無く、そのためには議員を動かすしかない。
 もう一つ、この話題とマイナンバーとは直接関係ない。

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