覆面リサーチボス潜入

NHK BSでやっている「覆面リサーチボス潜入」が面白い。巨大企業(サービス産業)の代表者や幹部が、現場に身分を隠して変装して潜入し現場労働者と接触する。そして、あとでその労働者に身分を明かしてびっくりさせたり感動させたりする。

このフォーマットはNHKがイギリスのテレビ局からフォーマットを購入して、この番組は制作されている。

身分を超えたリアルなドラマは、国境を越えた普遍的なおもしろさをもつようだ。物語構造は水戸黄門のそれと完全に同じである(私は結構水戸黄門好き)。

私も、大学を出て新卒で「企業幹部候補社員」(笑)として小さなメーカーに入社し、地方の工場に研修で働いたことがある。研修でであった「現場」「労働者」。いろいろな感慨が当時はあったが、その会社で幹部になるコース(笑)をあっさり半年で捨てて10年。いまこの番組を格別の思いで楽しむことができるという意外な「効用」が(会社の経営者になったが現場の労働者も兼ねている)。

今回観たのは、幸楽苑というラーメンチェーン店と、日本交通というタクシー会社の事例。いずれも、現場と経営者とでは、やっていること見ている世界がまるっきり違う。もちろん、人間も根底から違うということがよく分かる。

幸楽苑の取締役は、地方の不振店の店長に自分で研究して考案したという店の既存材料で作る中華丼を振る舞われ、喜ぶ。チェーン店だから、店単位ではメニューを作ったり提案する余地はなかったが、この店長がきっかけとなり、本部にメニュー提案する制度が新設された。

タクシー会社会長は、家に小学生の子供をひとり置いて夜勤でタクシー運転手をするシングルマザーと出会う。客を拾った通りに目印を付けて、売上を少しでも増やす努力を地道に続ける母親に対し、子供は「尊敬しています」と会長の前でいう。彼女がきっかけとなり、頑張る女性ドライバーを表彰する賞が新設され、この女性ドライバーは受賞第一号となった。これなど涙無しには見られない。会長は、彼女の子供にディズニーランド招待券をプレゼントするのだが、私もそんなことされたら泣いてしまうと思った(企業経営者としては私は会長と同じ立場のはずだが家計は火の車なので娘たちをディズニーになどとうてい連れて行けそうもないから)。

経営者たちは、現場の仕事に不慣れだ。当然である。やったことがないのだから。ラーメン店では、いらっしゃいませーと適宜声を出しながら、てきぱきと皿を洗ったり、ラーメン調理をこなさなければならない。タクシードライバーは、地方では高齢者の買い物に付き添ったりと、マニュアルには書いていないきめ細やかなサービス価値を作り出して客のロイヤリティを勝ち得ていた。

タクシー会社会長は、配車センターのオペレーターがしばしばドライバーに怒鳴られると知って怯え、スマホアプリからの配車指示でミスをして落ち込み、洗車の様子をベテランドライバーに「ぎこちない」と指摘される。

一方的にマニュアルを整備して配り、あとは数字だけをチェックする本社の経営陣には見えなかった部分だ。

私はこれを見て、現場も経営者も、車の両輪のようにお互いの存在を対等に尊重してやらないと、これからは絶対アウトだと思った。人間が人間同士協力しなければ、もうロボットとかにあっさり全部置き換えられかねないと思った。サービス産業を洗練させていく以外に、もう日本の未来はない気がしている。

そのためには、経営者は現場での労働をもっとベタに体験してコミュニケーションを取る必要がありそうだ。

にもかかわらず、あらゆる大手企業は株主とのせめぎ合いの中で、現場の労働者を物のように扱い賃金給付を低く抑え、会社だけが存続すればよい風潮が広がっている。

しかもそうした労働者たちは、近い将来ロボットや人工知能によってほとんど置き換えら得ることも視野に入っている。

そうなったらまずいと思う。ロボットに置き換えられたら、現場の人たちはどうやって生きていけばよいというのか?(そこで一部の論客はベーシックインカムとかいっている)。しかし、この番組を見る限り、現場の人たちは、仕事にやりがいと矜持をもってやっている。賃金の多寡ではなく、仕事そのものに、「意味」を見いだし、生きることそのものが仕事に直結している。仕事がロボットに置き換わったからといって、単に金を渡してお終いで済むはずがないと思った。(しかもたぶんBIだけでは足りないし)。

解決策は、経営者と現場の人の賃金の格差をなるべく小さくすることだろう。ただそうするとロボットに置き換えが加速化する危険もある。ロボットのほうが安いからと。もちろん、経済効率でいえばそうかもしれない。

しかし、この番組でボスたちが学んだのは、経営判断を、経済効率だけでしていいのか?という問題である。もちろん答えはノーだ。ロボットのほうが安いからはいクビ、あとは政府の社会保障で生きてね、なんてのは、例えるなら、19世紀の焼き畑農業のようなものだろう。

要するにそれだと、自然と人間が共生できないから、効率が悪かろうが何だろうが、共生のために不効率を受け入れるしかない部分がクローズアップされてきたわけで。つまり、この地球という限られた資源を少しでも長らえさせるために、経済一側面だけでなく、多面的に、長期の視点で考えろと。

人間社会も、労働者と経営者の共生なくして、持続可能な社会は成り立たない。人間皆同じというのは途中までで、5歳を過ぎる頃から大きく分かれていく。そういうのが協力して社会を作っていかないと。会社経営という船に乗っているのだから、労働者も経営者も、少しでも長くその船に乗れるように協力してみたらどうかね?そのためには経営者はちょっと不利益なことも受け入れる必要があるかもよ?そういう気持ちになる番組だ。

てゆうか、e-taxソフトの更新がめっちゃ時間がかかって終わらない助けて。

参考図書

人間の本性を考える 心は空白の石板か』という、ピンカーが書いた本があるから、それを読んで、いったい人間にはなぜこうした差が生まれるのか研究して欲しい。現場労働者と経営トップの差とは何か? なぜ、経営トップは偉いのか?それは頭がいいから?とかいろいろ。

IT、とりわけ人工知能が人間の仕事を奪うということで、いろいろ本が書かれているので、たとえば、『ロボットの脅威』とか『限界費用ゼロ社会』など読んで、いったいこれから、人間の仕事はどうなっていくのかを考えたい

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